iCloud Drive でいったい何が変わるのか?
アップルが6月のWWDCで発表したiCloud Driveでは、iCloudが新しく生まれ変わり、これまでのiCloudではできなかったことが出来るようになると伝えられました。その中でも重要なポイントは、
あらゆるデータやファイルが iCloud Drive に保存できるようになるということです。いったいどういうことか、以下 iCloudとiCloud Driveの違いを整理してみます。
アプリのデータの保存とバックアップ専用の 「従来型 iCloud」
iPhone(iOS7)で [設定]-[iCloud] を見ると、アプリの名前がズラリと並びます。メールや連絡先、カレンダー、メモ、といった標準アプリ、その他のiCloud正式対応アプリのそれぞれについて 「iCloudを使うかどうか」を設定するようになっています(下図)。Pages、Numbers、Keynote などの純正アプリのデータも、「書類とデータ」の設定でiCloudに保存できるようになっています。
アプリ毎にiCloudを使うかどうかを設定する
さらに、iPhoneのバックアップ先としてiCloudを指定することができます。[設定]-[iCloud] には、「ストレージとバックアップ」の設定項目があり、iCloudストレージをバックアップ先に選ぶことができます(下図)。
"ストレージとバックアップ"でバックアップ先にiCloudを指定可能
また、この記事では詳しく触れませんが、iPhoneの場所を特定したり、遠隔操作でロックやリセットができる「iPhoneを探す」機能や、おなじみの「フォトストリーム」もiCloud上に実装されています。
MacやWindowsでは、ウェブブラウザでiCloud.comサイトにアクセス、ログインすると、iCloudホームページが表示され、データにアクセスできます。フォトストリームは、Macの場合はiPhotoなどの対応アプリを使って、Windowsの場合は専用フォルダを介してアクセスすることができます。iCloudサーバに常に最新のデータを置くことで、自分の所有する他の端末のデータも、常に最新の状態に同期しておくことができる仕組みです。
ブラウザを使ってiCloud.comにログイン
さて、DropboxやGoogle Drive、Microsoft One Driveなどのクラウドストレージが乱立する中、iCloudは独自のスタイルをとってきました。即ち、
アプリのためのストレージ(iCloud) ⇔ 汎用のファイルストレージ(その他)という点が特徴的でした。iCloudのストレージは「ファイル置き場」ではなく、個々のアプリがそれぞれのデータファイルを管理する場所として設計されており、データファイルは基本的にアプリの管理下に置かれます。iOSでは、ユーザは「ファイルをタップしてアプリを起動する」のではなく「アプリの中からデータを呼び出す」ようにデザインされているためです。この方式は、ファイルシステムを中心に操作するパソコンのオペレーティングシステムとは発送が逆です。アップルはiPhoneやiPadのようなデバイスではユーザにファイルシステムを意識させないのがスマートだと考えているようで、パソコンOSであるOSXシリーズも、今後同様の操作系へとシフトしていく可能性はあり得るような気がします。
汎用クラウドストレージへと大きく方針転換する iCloud Drive
アップルのウェブサイトより
新しい「iCloud Drive」では、従来の機能に加えて、あらゆる形式のデータファイルが保存できるようになりました。"Drive"という語が用いられるようになることからも明らかなように、アップルは、ユーザが比較的自由に使えるネットワーク上のファイル置き場(ディスクドライブ)を提供することを宣言したわけです。これは、アップルがiCloudを他のクラウドストレージサービスと同じ土俵の上で競わせることを選択したと言う点で、大きな方針転換といえるでしょう。
OSX Yosemite または Windows 7/8ではiCloud Driveにファイルをドラッグ&ドロップすることで、どんな形式のファイルでもアップロードすることができるようになります。こうした使い方は、他のクラウドストレージの方式と全く同じです。
現在、iCloudと他のクラウドストレージを併用している人は多いと思います。アップルは、そうしたユーザに対して、
全て iCloud Drive にしませんか?と提案しているわけです。
どのクラウドストレージもそうですが、一定サイズの無料ストレージ(iCloudの場合は5GB)より大きなストレージを必要とする場合、有償のプランを選択することになります。この記事を書いている時点では、iCloudの追加ストレージの価格は、50GBで10,000円/年と、他サービスに比べてかなり高額です。最近、Google Driveは大幅値下げにより、100GBで月額2ドル(約200円)/月になりましたので、かなりの価格差です。
こうした状況を踏まえ、アップルは iCloud Drive の発表に合わせて、追加ストレージ価格の大幅な改定を予告しています。20GBで1200円/年、200GBで5000円/年、とGoogle Driveに匹敵する価格です。
iCloud Driveで有償追加ストレージを購入するメリットは?
iCloudの無料ストレージはおそらく今後も5GBのままなので、iCloud Drive を本格的に使いたい場合は、有償の追加ストレージを契約することになります。価格も似たり寄ったりの他サービスではなく、あえてiCloud Driveを選択する理由があるとするとそれは何でしょう?
これは言うまでもありませんね。これまで追加ストレージが高価だったために、iPhoneのフルバックアップをiCloudにとっている人はほとんどいなかったと思います。容量を抑えるために、写真をiCloudバックアップに含めないなどの方法が示されていましたが、実際のところは、写真こそむしろバックアップしたいデータそのものだったりする人も多いわけです。そういう方には、お財布が許すなら、iPhoneのメモリサイズより大きな追加ストレージを契約することが推奨されます。
- iPhone/iPadのフルバックアップを取れるのはiCloudだけ
- iOS8 の新機能 「iCloud フォトライブラリ」 には大容量ストレージが必須!
アップルのウェブサイトより
iOS8では、新たに「iCloudフォトライブラリ」が登場しました。従来、写真(ビデオは除く)は「フォトストリーム」を使って最近の1000枚だけがiCloud上に同期されていましたが、この機能が大幅に拡充され、ストレージの容量が許す限り、全ての写真とビデオがiCloud Drive上に保存可能になります。実際にiCloudフォトライブラリを使いこなそうとすると、5GBの無料ストレージでは全く足りないことは明白で、追加ストレージの購入は必須になりますね。
こうしたiOS8固有の機能と結びつけることで、アップルは、ユーザにiCloud Driveの追加ストレージ購入の強い動機づけを行っているように見えます。
実際、追加ストレージのプランは、20GBの次は200GBですから、上の2つの目的のためには、200GB(5000円/年)のプランを購入する必要があります。果たして、どのくらいのユーザがアップルの描くシナリオに乗ってくるかは、iCloud Driveが実際に始まってみないと分かりませんが、有償のクラウドストレージを契約する場合に、アップルユーザならiCloud Driveが有力な選択肢の一つになることは間違い無さそうですね。